[第5回] あずみの思い出を気ままに振り返っています。
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VSあずみ
基本的に短い戦闘シーンとあって、『あずみ』に出てくる敵キャラクターを強さでランク分けするのは意外に難しい。また、そこに意味はないのだろう。そういう漫画でもない。
ただ、魅力的なキャラクターが多いので、どうしても何らかの形で並べたくなるというのが人の情だ。また、戦うことのないキャラクター同士で、あるはずのない戦闘を空想するのも楽しい。その際に、誰がどの剣術レベルにいるのかはかなり重要になる。
前回に引き続き、各キャラクターのあずみとの対戦を振り返っていきたい。
成田慎蔵VSあずみ
滝沢柳太郎の友達で浪人の成田慎蔵。
滝沢もあずみも戦いを回避しようと話し合いに臨んだが、あずみの使命に対する決意の固さを見て、やむなしと判断し斬り合いに。
足首切りからの、双頭刃の柄側で心臓一突き。
柳太郎とちがって、成田はそこまで話に食い込んでいるキャラクターではないが、とどめの構図が抜群にかっこいい。宙を舞うモミジが、一瞬静止しているようにも見え、心臓を打ち抜かれた成田の心象風景のようだ。
それからよく見ると、あずみは、双頭刃の柄側しか抜いてない。たぶん、ぎりぎりまで戦いたくないという心理から本刃のほうは抜かずに、けっきょく切りかかられて仕方なく柄の刃を抜かざるを得なかったということだろうか。
戦い以前のあずみの態度や、ぎりぎりまで刀を抜かないことなどから見て、成田とは相当な実力差があると踏んでいたに違いない。特に成田の剣技などを見る機会もなかったはずなので、実力はもちろんのことあずみはかなりの自信家でもある。
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滝沢柳太郎VSあずみ
おじちゃんこと、食い詰めた浪人の柳太郎。初期のあずみの死生観に大きな影響を与えた人物。仕官を目指して旧豊臣恩顧の武将のもとへはせ参じた。
特に体術が強く、あずみを襲った浪人3人を、素手で簡単に打ち負かすほど。
あずみは何度も戦いを避けようとしたものの、結局避けられずに戦うことになる。
成田に一目置かれていた柳太郎も、あずみのスピードには太刀打ちできなかった。しかし、切られてもなお向かっていくタフさを見せつけた。
風雅だった成田の最後のコマと違って、柳太郎の背景は真っ白。でも、そこが喪失感と寂寥感を際立たせている。
「これでよかったのだ」という末期の言葉もしみる。柳太郎はあずみと戦ったら負けることはわかっていたのだろう。成田が相手にならなかったときに確信したに違いない。いや、それ以前にあずみらに侍集団が襲撃を受けたときに、その戦いぶりを見てあずみの強さを察していた描写もあるので、その時から覚悟はしていたのかもしれない。
相手が上とわかっていても、主君を守る使命があるので逃げるわけにはいかない。(主君といってもまだ正式に仕官できている状態じゃないのも、また泣ける。)ただ、柳太郎にとって主君がどうとかそういう問題でもないのだろう。その点は成田も柳太郎も剣に生きるものとしての矜持だろうか。さらには、ここを逃れて生き延びたとして、行く当てもない。
野盗から助けてもらったり、一緒に柿を盗んだりと、短い期間だけど馬の合う関係であっただけに、あずみに使命に対する疑問のくさびを打ち込んだ場面でもある。
戦い後も柿を見てはおじちゃんを思い出してしまうあずみ。
……つづく
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『あずみ』
- 著者: 小山ゆう
- 出版社: 小学館
- 連載誌/レーベル: ビッグコミックスペリオール / ビッグコミックス
- 連載期間: 1994年 – 2008年
- 全巻数: 全48巻(文庫版は全24巻)
- ジャンル: アクション漫画・時代漫画
ブログ内リンク
- 時代物アクション漫画の最高傑作『あずみ』を振り返る[8]【キャラクター強さ相関図】
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- 時代物アクション漫画の最高傑作『あずみ』を振り返る[6]【勘兵衛VSあずみ、飛猿VSあずみ】
- 時代物アクション漫画の最高傑作『あずみ』を振り返る[5]【成田慎蔵VSあずみ、滝沢柳太郎VSあずみ】
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- 時代物アクション漫画の最高傑作『あずみ』を振り返る[3]【死生観と思想2】
- 時代物アクション漫画の最高傑作『あずみ』を振り返る[2]【死生観と思想】
- 時代物アクション漫画の最高傑作『あずみ』を振り返る[1]【『あずみ』を読んだきっかけ】
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