
[第12回] あずみの思い出を気ままに振り返っています。
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VSあずみ
引き続き、各キャラクターのあずみとの対戦を振り返って強さを考察していきたい。
佐敷三兄弟VSあずみ・ひゅうが

月斎とうきはを退けて、月斎のいたの宿へやってきた佐敷三兄弟。そこであずみと鉢合わせ、戦闘が始まる。司令役で比較的冷静さを保っていた長男の残虐性がここで爆発。他の野伏たちもそうだが、腕一つで独立してやっているというよりは、まずなにか戦国の世でひどい目にあって、心に深い傷を負っていて、その反動からの傭兵家業ということなのだろう。この大勢に見られながらということをことさら言っているのは、おそらくこの兄弟の親か何かが大勢の前で見せしめ的にめった殺しにされたのではないかとか想像できる。
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佐敷三蔵VSあずみ

3対2の場面だったが、自然な流れで三蔵VSあずみの一騎打ちが始まる。
やはり前回の考察のように、三蔵は単独で戦うほうが都合がいいようだ。
自信満々の三蔵だが、あづみは、あっさりと桶で斧を防ぎつつ、下に潜り込んで、得意の足首切り炸裂。
うきははこの手斧の攻撃を見て、木立の中で戦う判断をしたが、あずみはむしろ広い場所で迎え撃つという逆の発想。結果的にも鎖の死角に入り込めた。手斧(鎖斧)を見た瞬間に、作戦が決めていたのなら、さすがというほかない。
たしかに、木立の中に入ったうきはに対して、三蔵は余裕の態度だったのが不気味で、気になっていたのだが、おそらく三蔵も障害物があったほうが、自分も守りやすくて形勢十分と見ていたのだろう。この手斧に対しては、一見危なげな広い場所こそ、弱点が生まれると。
それを見極めたあずみの戦術ももちろんだが、自分の素早さと、見切りの良さに絶対の自信をもっているからできた芸当だ。あずみであれば、おそらく小太刀でも三蔵に勝てただろう。三蔵戦を比較して、うきはとあずみの力の差がはっきりと分かる。

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佐敷二斎VSひゅうが

一方、ひゅうがは二斎と対峙している。長兄の一心は二斎の後ろに控える。やはり、三蔵は一人というのがこの兄弟の配置なのだ。
そして、戦いの前に二斎は二刀における心構えについて講釈する。なるほど、たしかにそのとおりだ。ここは、素直に聞いておこう。後の戦闘の考察に使えそうだ。


ひゅうがは力負けをして刀を二本とも弾かれてしまう。
やはり二斎のいった通り、二刀は力が重要なのだ。が、しかし、ひゅうがはそれを跳ね除けるほどのアクロバティックな身のこなしを見せて、二斎の首筋に折れた刀を差し込んだ。
最初に読んだとき、このあと首を刺された二斎がしぶとく食い下がったのが不思議だったのだが、折れた刀というのを再確認して、なるほどと思った。完全なトドメにはなっていなかったのか。こういう細かいところも、辻褄が合っているのが、何度読み返しても飽きない「あずみ」の特徴。
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佐敷一心VSあずみ

三蔵がやられ、長兄の一心が出てきた。このシーンがめちゃくちゃかっこいい。悠然と二刀を振りかざす背後では、弟の絶叫が響き渡るという。しかも、そんな弟を意に介さない一心。このへんに「あずみ」の世界観が凝縮されていて、読んでいて痺れる。


腕力に差がある以上、受太刀をしては体制を崩されるだけ。あずみの長い髪がバッサリと来られた。髪とはいえあずみが切られるのは、やはり珍しい。怪力と振りの速さの総合力を考えると佐敷一心は相当の実力の持ち主だ。
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そして、この立会であずみは作戦を変える。まともに受太刀したら勝てない。こんどは鞘を使って受ける。
理屈としては、刀で跳ね返すと衝撃がもろにくるので、柔らかい鞘でということなんだけど、すっぱり切られたらどうなるのだろうか? 多少は軌道が変わるから、避けられるのか。かなり危なく見える。一か八かの印象は拭えない。
実はこの戦い、一番危なかったんじゃないのか。なんて後から見て思うのだが。
あずみに対しては、力が強く、二刀で、素早さもそれなりにある相手、これを満たすと勝てる確率は高い。
だいぶ後の考察になるが、宮本武蔵との立会いも、結果は引き分けのような形で終わったものの、あずみ自身の評価は負けていたとなっているのも、これを裏付ける。
あずみは、素早さと、見切りの目が抜群にいいので、技や速さだけではかなわない。あと、どんなときも冷静に最良の戦術を瞬時に実行するので、驚かし系の技もあまりきかない。
武蔵やこの一心のような、正統派の剛腕二刀がもう少し出てきたら、面白いのだが。
……つづく

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『あずみ』
- 著者: 小山ゆう
- 出版社: 小学館
- 連載誌/レーベル: ビッグコミックスペリオール / ビッグコミックス
- 連載期間: 1994年 – 2008年
- 全巻数: 全48巻(文庫版は全24巻)
- ジャンル: アクション漫画・時代漫画
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