
[第10回] あずみの思い出を気ままに振り返っています。
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VSあずみ
引き続き、各キャラクターのあずみとの対戦を振り返って強さを考察していきたい。
佐敷三兄弟

いかにもな敵キャラが出てきた。
これはあずみたちとの対戦が楽しみだ。
戦闘に関しては後々考察するとして、こういった腕自慢の浪人の立ち位置みたいなものも考えてみたい。なんとなく力関係はわかるのだけど、武士の世界は上下関係厳しいような気がするので、臨時雇いとはいえ浪人がどこまで突っ張れるのか、重臣たちはどこまで許しているのか、その微妙な距離感を計りたい。
この佐敷三兄弟は、井上勘兵衛の国元から呼ばれて来ているので、当然その勢力下の者であり、身分もかなり違うだろう。加藤清正の重臣の勘兵衛に対し、臨時雇いの傭兵侍ならば、もっとへりくだって接するのが普通の感覚に思えるのだが、この兄弟たちは憮然とした態度で悪びれる様子もない。官兵衛に対し敬語も使わずに返答している。
官兵衛が返答する前に、無言の間を入れていることから、この兄弟の言葉遣いはあまり気分の良いものではなさそうなのがわかる。といって、なにか言うわけでもなくそのまま任務を与えているので、許されないほどのものでないと言ったところか。


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じゃあ、佐敷三兄弟は完全に官兵衛を甘く見て無法図に振る舞っているかというと、そうでもなく、最低限度の節度があるのではないかと読み取れるのは、下のコマから。

三兄弟はバラバラに座って、官兵衛を前に礼を失しているようにも見えるが、長男の一心だけは膝を折って官兵衛に正対している。きれいめの肩衣を着ているのもこういう場に必要なものと考えているからだろう。
そして、敬語を使わず官兵衛に返答したのは、次男だ。長男と官兵衛の会話はのシーンはないが、おそらく敬語を使っているのではないかと思われる。
つまり、代表者の長男さえ礼儀をわきまえれば、ギリギリ許されるというのが、当時の腕自慢の傭兵と重臣たちとの距離感だったのかもしれない。雇う側も、仕事さえこなすのなら、大抵のことは目をつむったほうが使いやすかったのだろう。
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大まかな距離感がわかったところで、じゃあ、この長男は自分の弟たちをどう思っていたのだろうかと、どうでもいいところだけど、意外と気になる。
もし、長男が最低限度の礼儀を持っているのなら、弟たちの態度はまずいとわかるはずだ。その弟たちの分まで膝を折り頭を下げているようにも見える。であれば、あえてこの会合に連れ来る必要もないのではないか。官兵衛から司令を受ける際は、長男だけが参じて受ければ良い。その後で、宿かなにかで3人で作戦を立てらばいいのだから。
それをあえて連れて来ているのはなぜだろう? 仲が良いから、いつも三人一緒なのだろうか? それとも待ってる時間が退屈だからついてくるのだろうか? そうではない理由があるとしたら?
もしかすると、長男はこの無礼な弟たちを配置して、それとなく重臣にカマシを入れているとも考えられる。自分が勘兵衛に対して不遜な態度を取ることは立場上できないけれど、といって平伏しているわけでもないぞというところは見せたい。そんなときに、この弟たちはうってつけだ。
大名に仕える身分の武士に対しての、腕一本でやっている浪人の精一杯の矜持ともとれる。
それに、司令の内容が無理難題だったり、報酬が安いなどの場合、長男だけでは交渉が行き詰まる可能性が高い。そのときに弟たちに吠えさせて、自分はなだめ役に回り、落とし所を探るという作戦が使える。
こういった傭兵家業では、その時その時で仕える相手も変わるだろう。そうなると、より一層この手のパターン化された交渉術は有効になる。また、
さすがの佐敷三兄弟である。強敵に違いない。
……つづく

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『あずみ』
- 著者: 小山ゆう
- 出版社: 小学館
- 連載誌/レーベル: ビッグコミックスペリオール / ビッグコミックス
- 連載期間: 1994年 – 2008年
- 全巻数: 全48巻(文庫版は全24巻)
- ジャンル: アクション漫画・時代漫画
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