時代物アクション漫画の最高傑作『あずみ』を振り返る[4]【なちVSあずみ、倉次郎VSあずみ、弥衛門VSあずみ】

[第4回] あずみの思い出を気ままに振り返っています。

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戦闘シーン

『あずみ』の魅力としては、やはり切れ味の鋭い戦闘シーンだ。
常に真剣を使っての勝負であるから、当然、派手なものになるのだが、いわゆる漫画的な派手さかといわれると、そうでもない。

組み合いと決まり手はたいてい同じだし、戦闘シーン自体もあっけないほど短い。しかし、決まり手が変わらないのは、無駄な動きをしないという剣術としての合理性だし、短い戦闘シーンというのも、真剣の勝負という意味でリアリティを感じさせる。何度も同じような戦闘シーンを見ているのに、毎回目を奪われるものがある。飽きがこないのだ。

数巻にわたったストーリー上の重要な相手との戦闘も、始まればほんの1-2ページか数コマであっさり決着がつく。そもそも、つばぜり合いの描写に特化した漫画でもないということだが、意味のないチャンバラでページ数を稼がないというのも潔くて好きだ。まさに切れ味鋭いといったところだ。

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VSあずみ

基本的に短い戦闘シーンとあって、『あずみ』に出てくる敵キャラクターを強さでランク分けするのは意外に難しい。また、そこに意味はないのだろう。そういう漫画でもない。

ただ、魅力的なキャラクターが多いので、どうしても何らかの形で並べたくなるというのが人の情だ。また、戦うことのないキャラクター同士で、あるはずのない戦闘を空想するのも楽しい。その際に、誰がどの剣術レベルにいるのかはかなり重要になる。

そこで、各キャラクターのあずみとの対戦を振り返っていきたい。

なちVSあずみ

まずは暗殺児童たちの中の筆頭のなち。あずみの最初の戦闘シーンだ。

あとから読み返すと、この初手の受け太刀はかなり珍しいことがわかる。体格に勝る男が相手だと力負けするので受け太刀はしない、というのがあずみの定石だからだ。

しかも、迎えながら受け太刀してるので、先手を取られて仕方なくというわけでもなさそう。意外と謎の戦術といえる。

少し前のコマで、あずみが「抜く速さは、やっぱりなちが一番だな」と言っているので、なちは力よりもスピード勝負のタイプかもしれない。それをわかっているあずみは、あえて初手をかわさずに、受けることで意表を突き、その後の組み合いを優位に運んだという見方もできる。

たしかに、なちもほかの同輩の子らに「受けと攻撃が手順通りではだめだぞ」とアドバイスしているし、月斎もどこかの巻で、さいごは定石を外したところでの勝負になる、みたいなことを言っていたので、それを実践しているのかもしれない。

やはり、あずみは恐ろしいほど冷静で強い。それと同時に、なちの実力もあずみにとって定石を超えた戦術をとる必要があるレベルということがわかる。

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倉次郎VSあずみ

本来の取り上げる必要もないレベルなんだけど、一応、下谷の村の倉次郎も。

村一番の手裏剣の名手も、あずみにあっさり手づかみで受けられなすすべ無し。なちの強さを図るための物差しの役割を担って、舞台から消えていった。

弥衛門VSあずみ

あずみらをときおり指導してくれた下谷の忍者。指導してくれたというのは表向きで、おそらくこの奥谷にいる間は何かと交流せざるを得ないので、そういうことにしていたのだろう。

子供たちからは嫌われてるわけでもないが、特に尊敬もされていないようだ。

そして、あずみらが下谷に見学に来た時に、よこしまな考えがよぎり、晩節を汚してしまう。

これがなければ、月斎にだまされただけのかわいそうな人なんだけど、ちゃんと人間味を出してから抹殺されるので、しっかりとキャラクターとして記憶に残る。

小物中の小物のような描かれ方だけど、ちょっと欲が過ぎただけで、みんな多かれ少なかれあずみを女として見て、その魅力にひかれてるので同じことだろう。のちに伊達政宗も最後死を前にしてあずみの身体に見とれていたくらいだ。政宗はかっこよく描かれたのに比べて、弥衛門様はちょっと不憫ではある。やはり手を付けようとする、しかも姑息な方法でというのがいけないのかも。

……つづく


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『あずみ』

  • 著者: 小山ゆう
  • 出版社: 小学館
  • 連載誌/レーベル: ビッグコミックスペリオール / ビッグコミックス
  • 連載期間: 1994年 – 2008年
  • 全巻数: 全48巻(文庫版は全24巻)
  • ジャンル: アクション漫画・時代漫画


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